「働き方改革」4月施行。残業規制ばかり先行して「働けない改革」になってない?

「働き方改革関連法」は平成31年(2019年)4月1日から順次施行されています。
「令和」が始まろうとする今、この「改革」が本当に「多様な働き方を選択できる1億総活躍の新しい時代」(安倍首相)を実現するものになるのでしょうか。
経営者は呪文のように「生産性向上」を唱え、働く側は新制度と現実のはざまで不満が募るばかり・・・。
そんな「働き方改革」は「働かせ方改革」であり、無理な残業制限と非正規雇用の切り捨てが目立ちませんか?それでは「多様な働き方を選択できない世の中」になりませんか?

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「正規雇用」と「非正規雇用」分けることにムリがある?

平成30年(2018年)7月20日、安倍首相は通常国会閉会後の記者会見でこう述べました。

「労働基準法の制定以来、実に70年ぶりの大改革がこの国会で実現いたしました。わが国に染みついた長時間労働の慣行を打ち破る。史上初めて労働界、産業界の合意のもと、時間外労働について罰則付きの上限規制を導入します。この国から非正規という言葉を一掃する。雇用形態による不合理な待遇差を禁止する同一労働同一賃金を実現します。育児や介護など、さまざまな事情を持つ皆さんが、多様な働き方を選択できる1億総活躍の新しい時代に向かって大きな扉を開くことができたと考えています」

「非正規」を一掃するってどういうことでしょうか?

そもそも、「正規雇用」「非正規雇用」って何でしょう?

一般的には「正規雇用」=正社員、「非正規雇用」=派遣・契約社員、パートアルバイト というように理解していると思います。

就職氷河期(平成5年・1993年~平成17年・2005年)は深刻な就職難の時期で、この時に正社員になれなかったためにずっと非正規雇用で働いている、という方たちも多いです。

こういう方たちは色々な面で不安定で、40歳にもなるのに結婚することも出来ない、という話を、最近はよく聞くようになりました。

確かに「非正規雇用」は不安定です。

いつクビを切られるかわからない。

収入が安定しない。

社会保険、退職金、福利厚生など正規雇用では ”標準装備” されているものがいわばオプションであったり、「不合理な待遇差」はお給料だけでなくこういう所にもありますよね。

安倍首相の「非正規」を一掃する、とは、「不安定な非正規雇用」を一掃するという意味だと思います。

しかし雇用形態を「正規」と「非正規」の2つに分けるなら、総務省の労働力調査によれば、2017年の非正規雇用の割合は37.3%、実に4割近くにもなります。

この4割を「一掃する」ことが果たして出来るのでしょうか?

確かに、いわゆる安定した働き方を求める人は、やはり正規雇用が望ましいわけです。

これから結婚して子育てをするといった場合、この ”安定” は何より大事です。

昭和の時代までは、人は結婚して子供を産み家族が出来て一人前、が当たり前でした。

日本の ”終身雇用””年功序列” は安定・安心して働くための理想的な、もっとも合理的なシステムでした。

経済大国への道をひたすら突き進み、産めよ増やせよの時代にはそれが一番理にかなっていたし日本人の気質にも合っていたと思います。

どんなに時代が変わったって、人の営みはそう変わるものでなく、安定した職場、安定した収入が何より大事な時期は人生の中で必ずあるものです。

そういう人たちが不安定な非正規雇用に甘んじている状況は何とか解決しなければいけません。

しかし時とともに核家族化と少子高齢化がどんどん進み、生活スタイルは多様化しました。

「非正規雇用」であっても、働き方が希望に叶っている、生活スタイルに合っているという人の割合は増え続けています。
働ける時間に働きたいだけ働くことをこそ望んでいる場合、一般的にはどうしても「非正規雇用」にならざるを得ないですよね。

でも誰だって、人生のどんな時点にいようと、働ける時間に働きたいだけ働くほうが良いに決まってます。
現在「正規雇用」されている人だってそう思うのではないでしょうか。

「正規雇用」で残業時間を規制されて喜ぶ人とそうでない人もいるし、「非正規雇用」で就業時間と働きたい時間がマッチしない人もいます。

業種も職種も雇用形態もかまわず残業規制をしたり、生産性向上を叫んで「働き方改革」をしたところで、経営者も労働者も希望と現実が合わなくなる・・・のじゃないでしょうか。

もはや「正規雇用」と「非正規雇用」の2つに分けて考えること自体、ムリというか無意味なのではないでしょうか?

分けるとすれば、「派遣社員」と「直接雇用」、または「月給」か「時間単位給(時給・日給)」のほうが良い気がします。

そういう意味で「非正規という言葉を一掃する」のならわかります。

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「働き方改革」は「働けなくなる改革」にもなっている

例えば残業規制。

残業時間に上限を設けて何が何でも一人当たりの労働時間はここまで!と規定するのはどうなのか。

月給制なら残業代が減っても基本となるお給料は減りませんので、本来あるべき姿は極力残業ナシです。
ムダな残業を減らしましょう。

ところがそうはいかない、ある非正規雇用の ”現場” の話。

Aさんは66歳。
60歳で定年退職しましたがリタイヤ後も生活のためにはまだ働かねばならず、パート採用でビルの駐車場に勤務して6年が過ぎました。

幸い、いたって健康だし、まだまだ隠居生活をするつもりもありません。
働けなくなるまで働きたいと思っていますし、今の仕事もベテランとなり頼りにされています。

都内の駐車場はたいていビルの1階から地下にあります。
朝7時から夜10時までの15時間、ビルごと休業しないかぎり駐車場も営業、ほぼ年中無休です。

現場の仕事はすべてパート採用の人たち、リーダーのAさんが毎月シフトを調整しています。

基本的には常に2人態勢、1日を7.5時間ずつ前半・後半に分け交代するので、最大で1日4人勤務することになりますが、15時間の ”通し” 勤務もアリです。

社員は管理・監督の立場なのでシフトには入りません。

パート勤務は芸人や役者、ミュージシャン、カメラマンなどが多いのですが、要は本業では食べていけないから働いているので「非正規雇用」がぴったりの人たちなんですよね。

入れるときはガッツリ働いて稼ぎたい人たちばかり、”通し” もむしろ喜んで、という感じなので少ないメンバーでもシフトを組むのは割と楽でした、ちょっと前までは。

ところが昨今の「働き方改革」に伴い、一人当たりの勤務時間を大幅削減することになり、1日8時間を超える部分の ”時間外労働” は月60時間まで、と通達がありました。

”通し” の多かった人はそれが出来なくなると出勤日数を増やすことになって本業との兼ね合いが難しくなったり、シフトが組みにくくなったりします。

所帯持ちにとっては結果収入減にもなり、大打撃です。

そりゃ確かにその人一人のその日を見れば ”時間外労働” かもしれませんが、駐車場は残業でも何でもなく15時間営業しています。
限られた人数で営業時間をきちんと営業することが ”残業” と言われても困りますし、イヤがる人を無理矢理働かせているわけでもなく、出勤出来る人、働きたい人が働くと言っているのを制限するのは「働き方改革」なのでしょうか?

Aさんも、66歳ですが ”通し” は難なく出来るし、その翌日を休みにするほうが働きやすいのだそうです。

皆の事情もよくわかっているので稼ぎたい人にはしっかり働いてもらいたいのですが、会社の方針に従うとシフトを組むのもひと苦労、これでは「働けなくなる改革」ではないかと言います。

この駐車場管理会社は中小企業ですので、「残業時間の上限規制」が適用されるのは2020年4月1日です。

しかし今から移行期間として取り組みを開始したということでしょう。

仮にすべてのシフトを7.5時間の勤務交代だけで済ませられれば 「残業時間の上限」内に収まるし、 ”時間外労働手当” がなくなることはとても大きなコストダウンになるでしょう。

ただしそれを実現するには、まず人手不足を解消することですが、そのためには賃金体系の見直しや職場の環境整備などの課題があるのでしょうね。

「非正規雇用」で働く場合のメリットのひとつには、希望の稼ぎに合わせて働けるということがあると思うのですが、経営者(雇用する側)がこれを理解しないと離職率が改善されず、慢性人手不足から抜けだせないことになりかねないと思います。

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「100人100通りの働き方」サイボウズの改革がスゴイ

ビジネスソフトウェア開発・販売事業を運営する「サイボウズ株式会社」という会社があります。

ここの青野慶久社長は、「100人100通りの働き方改革」を推進中です。

「働き方改革」といえばサイボウズ、というくらい有名なのだそうですね。

青野さん(以下、敬称略):オフィスで長時間働きたいという人もいれば、在宅で短い時間しか働けないという人もいます。同じ「産休・育休から復帰した人」でも、1日フルタイムで働きたいという人もいますし、限られた時間しかないが働きたいという人もいるのです。同じ1人の人でも、自分で思っていたほど働けないときもあるでしょうし、タイミングによっては思っていたより働けるときもあるかもしれません。そうしたさまざまな人、さまざまな状況に対応できる環境を整備しています。朝から1日働くか、午前中だけ働くか、それともお昼すぎから働くか、どこの場所で働くか、どのぐらい在宅勤務をするか、といったいろいろな選択肢からパターンを用意しています。そのパターンのどれを選ぶか、あなたはどのパターンで働きますかというのを、自分で決めて宣言してもらいます。
「みらいワークス」のインタビュー記事より引用:https://mirai-works.co.jp/interview/m002/

「令和」の時代の「働き方改革」は、まさにこういうことだと思います。

2017年のサイボウズ株式会社の平均年齢は34.6歳、従業員数414人(年収ガイドより)だそうで、とても若い!ですが、もちろん40代や50代の従業員もいらっしゃいます。

60代はいるのかな?
それはよくわからないけど、定年制はないみたいです。
青野社長は「定年制度は年齢差別です」とおっしゃっています。

ここの「働き方改革」はとても斬新で、フレックスタイムや在宅勤務どころではなく、必要な残業OK、「育自分休暇」(自分を育てるためにサイボウズを一度退職して復帰できる)、副業推奨(サイボウズに所属して副業OK、サイボウズを副業にするのもOK)、子連れ出勤などなど面白い工夫が満載です。

2005年に離職率28.5%を叩き出した?サイボウズは、「100人100通りの働き方」改革を進めたことで離職率を4%にまで下げることができたそうです。

働くこと は、そのまま、生きること ですよね。

労働に見合わない報酬では生きられないし、金銭以外にもやりがいや楽しさを見出せなければ続かない。

環境、生活、個性と仕事のバランスが合わなければ働くことが辛くなってしまいます。
辛い思いをして働くだけでは仕事にも人生にも良い影響はないです。

最近よく聞く「ワーク・ライフ・バランス」は、そういうことですよね。

「働き方改革」とは、社員とその家族の不幸をなくすこと

青野社長のこの言葉を、「働き方改革」に携わる方々すべてにあらためてお考えいただきたいと思いました。

そうすれば、正規雇用とか非正規雇用とか、男とか女とかは関係のないことだということもわかると思います。

残業を減らそうとか、育児休暇は男も必ずとろうとか、女性活躍社会とか、そんな形式ばかりにとらわれているから板挟みになる人が増えるんですよ。

日本の「働き方改革」は、それ以前に「経営者改革」から始めたほうが良いのではないでしょうか。

社員が辞めない会社を目指すことが、一番効率良く儲かる会社だと思うのですけどねぇ。

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