痛ましい交通事故の報道が目立ちます。
4月19日の「池袋87歳暴走事故」のショックも冷めぬ5月8日、大津市では右折車と直進車の衝突でお散歩中の保育園児2人が死亡、5月11日は北海道江別市で3歳児が意識不明など、何の落ち度もない若いお母さんや幼い子供が被害に遭う理不尽には誰もが怒りを覚えたことと思います。
高齢者の免許返納が急増しているそうですが、いったいなぜ事故が起き、どうしたら事故をなくせるのでしょうか。
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高齢ドライバーの事故は本当に増えているのか?
4月19日に池袋で起きた母娘(37歳と3歳)が死亡した事故の運転手は87歳男性の時速100Kmの暴走でした。
アクセルが戻らない、と言いながら加速したようですが自動車の欠陥は認められませんでした。
事故を起こした元官僚もケガを負って入院が必要だったため逮捕されず、取り調べや身柄拘束は回復を待つことになりましたが、本日(5月12日)現在、新たな展開はないようです。
高齢者が運転する自動車事故を聞くたびに、しかも被害者が年少で死亡や重症といった場合、なぜ、余命いくばくもない年寄りが若い人の未来を奪うのだ、と思ってしまうし、辛すぎる事故をどうにかして未然に防ぐことは出来ないのか、という思いでいっぱいになります。
平成最後の4月だけでも、高齢の運転手による事故の報道が相次ぎました。
- 4月15日 福岡県 72歳男性 無免許酒酔い運転軽自動車 衝突事故
- 4月13日 さいたま市 78歳男性運転の軽トラックひき逃げ 74歳女性死亡
- 4月12日 釧路町 73歳女性運転乗用車 スーパー入口に突っ込む
それ以前の事故も記憶に新しく、近年はやはり高齢者による事故が増加しているように思えます。
- 2019年1月13日 神奈川県 82歳女性運転ワゴン車 薬局に突っ込む
- 2018年10月28日 千葉県 77歳女性運転乗用車 国道逆走、3台絡む衝突事故
- 8月29日 函館市 82歳男性運転乗用車 コンビニに突っ込む 女性客ケガ
- 8月19日 各務原市 87歳男運転性軽乗用車 2人の女子高生ひき逃げ
- 7月25日 70歳男性乗用車 横浜横須賀道路逆走、次々衝突
- 5月28日 茅ヶ崎市 90歳女性運転乗用車 横断中の6人をはね50代女性死亡
- 2月18日 港区 78歳男性運転性乗用車 37歳男性死亡、店舗兼住宅損壊
- 1月9日 前橋市 85歳男性運転性乗用車 2人の女子高生はねる、1人死亡
もちろん交通事故は運転者の年齢に関係なく起きます。
けれど高齢化が急速に進む中、免許を保持する人の高齢化も進み、交通事故の当事者となってしまうお年寄りの数が増えるのは当然のことです。
でも、高齢ドライバーが事故を起こす割合は増加しているのでしょうか?
日本は今や4人に1人が高齢者です。
昭和25年には総人口8411万人のうち、高齢者(65歳以上)が占める割合は4.9%(約416万人)で、
平成28年は 総人口1億2,693万人、高齢者(65歳以上)は27.3%(3,459万人)。
10年後には高齢者が30%を超える予測です。
(このうち団塊の世代(1947年~1949年生まれ)は806万人)
これだけお年寄りが増えれば交通事故で亡くなる方が増えるのは当然ですが、そのトップは歩行中です。

歩行中の事故が一番多い
平成28年の高齢者3,459万人のうち、自動車の免許を持っている人は513万人。
問題は、この ”免許保有者” が事故を起こす割合は上がっているのか、ということです。
平成29年の全年齢層の事故発生件数の比較です。
16~19歳 11.4件
20~24歳 5.2件
25~29歳 4.0件
30~34歳 3.3件
35~39歳 3.0件
40~44歳 2.9件
45~49歳 3.8件
50~54歳 3.6件
55~59歳 3.4件
60~64歳 3.6件
65~69際 3.4件
70~74歳 4.1件
75歳以上 7.7件
これだけを見ると、やはり免許取りたての10代の単車・自動車運転の事故がダントツに多いです。
確かに、事故件数は若い人より高齢者のほうが少ないんです。
しかし、10代20代に続いて75歳以上が多いことも確か。
ここを、特に75歳以上の高齢者(とその身内)は真剣に受け止めなければいけません。
過去からの推移をみると

高齢運転者による死亡事故件数の推移
免許保有者の死亡事故の件数全体が下がっている中で75歳以上、80歳以上の件数も下がっています!
ところが ”免許保有者の全死亡事故” に占める75歳以上の割合は確かに増加しているんです。

75歳以上運転者の死亡事故件数の推移
死亡するのは単独事故でもあり得るわけで、高齢者ほど単独事故で亡くなっています(平成29年)

死亡事故の類型比較
高齢者はどのようにして事故を起こすのか、というと、やはり、というか案の定、運転操作間違いが圧倒的です。

死亡事故の人的要因
最近の高齢ドライバーの事故はプリウスが多い、なんてウワサが飛んでいます。
実際、プリウスのシフトレバーがわかりにくいというか、高度?なのかな? とは思いますが、それは購入前に検討するのじゃないかと思いますし、同様のシフトレバーの他社車もあるし、クルマのせいとは言い切れないと思いますが。

プリウスのシフトレバー
確かに、どんな道具もキカイも、ユニバーサルデザインや、同じ機能の部分は同じ操作という業界全体の規格が必要だと思いますので、クルマを作る会社にはぜひ、大事なところの統一規格を決めてほしいです。
年齢だけでなくクルマに対する知識が豊富か乏しいか、運転技能の差、身体的障害の程度などにかかわり、高齢者だからということだけが問題ではないはずですから、わかりやすい、操作しやすいことは大事だと思います。
でも、こうして高齢ドライバーの事故が連発すると、やはり誰もが「増えているんだなぁ」と思いますよね。
実際、免許保有者の全死亡事故に占める割合が増加しているのは確かなのです。
ですが、増加率の数字よりも現実にすごく増えていると感じるのは報道によるものだと思います。
上のデータでは、平成29年は平成28年より減りましたけど、ゼッタイ、一昨年より昨年、昨年より今年が増えている!って、感じませんか?
以前には報道しなかったようなニュースまでもが、ことさら取り上げられているせいではないかとも思えます。
人々の関心が高いから、視聴率がとれるから、つまり、”旬” の話題だから、という時期的な?こともあるかもしれません。
でも、もしかしたらそうやって盛り上げれば免許返納年齢の制度化が早くなるんじゃないか、という期待もあるのではないかと感じます。
皆、それだけ他人事ではないのです、きっと。
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免許を返納すべき人は高齢者だけじゃない
5月8日の大津市の事故は、言葉にならないほどつらい悲惨な事故になってしまいました。
T字路の交差点で、右折車と直進車が衝突、はじかれた直進車が信号待ちの園児の列に突っ込んだ事故です。
2歳の園児2名が死亡、2歳の男児が意識不明の重体、ほか13人が重軽傷を負いました。
池袋の事故に大きなショックを受けて間もなくでしたから、うわ~、またご老人!と思いました。
ところがこの事故は、52歳女性の右折車と、62歳女性の直進車の事故でした。
高齢者と呼ぶにはお若いお二人です。
それだけに、老人じゃないけど何も考えないで運転するような、運転資格のないオバサンが起こすべくして起こした事故、と世間の批評は厳しいです。

自動ブレーキがあれば防げた?
5月10日、愛知県西尾市で、道路脇を歩いていた近所に住む33歳女性と長男(2歳)が乗用車にはねられ、母親が意識不明の重体になっています。
警察は、乗用車を運転していた29歳男性を過失運転傷害の疑いで逮捕しました。
5月11日、北海道江別市の交差点で26歳女性(介護施設勤務)の軽自動車と50代男性のトラックが衝突、女性と娘(3歳)が意識不明の重体、トラック運転手にケガはなし、信号機がある見通しのいい交差点であることから、どちらかが信号無視をしたものとみられているそうです。
どちらの事故の当事者も、統計でも事故率の低い20代後半と50代の方です。
尊い命、幼い命が散るのは悲しすぎますが、事故を起こした当事者にも家族があり、未来があったことを思うと、高齢ドライバーとか若年層とか関係なく、とにかく事故が起こらぬように一刻も早く何か手を打たないと! という思いを、多くの人が感じたと思います。
池袋の事故以来、自主的に免許を返納する方が急増しているとのことです。
確かに高齢ドライバーが一番危険をはらんでいることは否めず、”ある年齢に達したら免許返納” は一番手っ取り早く、高齢ドライバーの事故を減らす確実な方法かもしれません。
しかし交通手段のない人はどうするとか、野菜の収穫にトラックが必要なんだよとか、当然の反対があるわけです。
あのね現状、本当に現状の話、高齢者の身分で免許返納してもまともに生きていける生活力のある人って、それこそ「家族」か「金」がある人なんよ。頼る身内も全然いない田舎の高齢者が、免許返納してどうやって生きていくのよ。個人主義なんてまだまだ若いから何とかなってんのよ。人は必ず老いるぞ
— エアマリ! (@rabbitch_) April 27, 2019
しかしこれ、「高齢者」を抜きにしても、どの世代にも言えますよね。
まして高齢ならなおさら、ということは当然あるし、今若くても必ず老いますしね。
高齢者の免許返納、確かに運転してて高齢者に危ないなと思った事は多々あるが、年齢で返納は現実的に難しいんじゃないかなあ。
僕は免許更新の難易度を上げるのが一番いいと思うんです
更新の度に学科・実技共に試験を実施して、試験に落ちたら若かろうが老いてようが更新できない。とかどうすかね
— 164 (@164203) April 29, 2019
免許を保有していて良いかどうか、は年齢の問題にしないほうが良いということですね。
どの世代にも ”返納すべき人” がいることは確かですし。
高齢ドライバーがなぜ危ないのかといえば、認知機能、判断力、身体的機能の衰えが一番の原因ではありますが、いってみればそれは一種の障害ともいえます。
では障害者用のクルマならOKなのかといえばそれも違うでしょう。
若くして障害をもった人とはまた違うはずだし、障害者用のクルマを購入することも簡単ではありません。
若くて特に障害を持たない人でも 運転に適性を欠く人はいます。
だとしたら年齢や免許保持の年数でなく、すべての人が免許更新時に試験を受けるという案はとても良いと思いますね。
私自身、何歳まで運転できるか、ということの前に ”自動車運転不適合者” にならないように慎重に運転すること、健康でいることが大事だと、よくよく自覚せねば、とあらためて思います。
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高齢ドライバー対象の講習も全員対象にすれば・・・
高齢運転者支援サイト というサイトがあります。
ここを見ると、70歳以上の運転免許取得者は免許証更新時に「高齢者講習」を受講しなければなりません、と書いてあります。
「高齢者講習」は免許更新期間満了の日に70歳以上の人は必須、さらに75歳以上の人は「認知機能検査」を受け、その結果に基づいた高齢者講習を受けなければなりません。
「高齢者講習」の中には動体視力、夜間視力、視野の検査、実際に運転をして運転状況を判定することも含まれています。
ただし、視力や視野、認知症などの判定はあくまでも医師の診断によるので、「高齢者講習」や「認知機能検査」の結果が良くない場合は医師の診断を受けること、という流れになるようで、直ちに免許取り消しとなるのは著しくその ”症状” が顕著である場合に限るようです。
この「高齢者講習」有料です。
確かに人手も必要、それなりの検査器具も必要、時間もかかるものなのでこれをいきなり免許取得・更新の人全員に、というのは相当難しそうですが、いずれにしても全員を対象にした ”更新時の関門” は必須なことなのではないでしょうか。
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教習所の合格ライン強化、更新時の適性検査の義務付けも
教習所での教習内容や、免許取得試験が甘すぎるのではないかというご意見はかなり前から相当言われていますよね。
昔は警官上がりの教官が多くて怖かった、とか、始業前点検や車の仕組みをもっとたくさんやったとか、今の教習所はよく知りませんが、ずいぶん様子が違うみたいです。
また、昔はMT車しかなかったので、AT車限定免許なんてものが出来た時には驚きましたよ。
まず最初はMT車を覚えるべきなんじゃないかと思いましたし。
でも、AT車どころか自動車まるごとコンピュータのような現代ですし、今後は自動ブレーキを標準装備せよとか、むしろ逆に高齢者はMT車しか許可しなきゃいいとか色々な意見が飛び交っています。
教習所の学科教習内容、技能講習の内容、レベル、試験の難易度は自動車事情や高齢化社会に合わせて変えることが必須でしょう。
免許証についても、免許の種類、年齢やレベルによる更新期間の見直し、更新時試験・検査の実施や年齢制限も必要だと思います。
クルマを作る会社も、「売れる車」と同時に「ユニバーサルなコンセプトの車」を考えていただけたらなぁと願います。
そして!
行政や地方自治体、町内会や商店会など、町ぐるみ、国ぐるみで対策しなければなりません。
まずは 移動手段に困る人 をサポートするにはどうしたら良いのか、ですよね。
ウチの母も独り暮らし、いつ買い物難民になるかわかりません。
世界初の超高齢化社会のニッポン、免許の有無にかかわらず、移動手段の充実は緊急の課題だと思います。
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