成人年齢引き下げがなぜ必要なのか、成立までの経緯と賛成意見

お酒は二十歳になってから
お酒は二十歳になってから

2018年6月13日の国会で成人年齢を18歳に引き下げる民法改正案が可決・成立し、早くも3週間が経とうとしています。

「18歳成人」がなぜ必要なのか、反対多数と言われる中で成立した経緯、各方面の人々の意見をまとめておこうと思います。

「18歳成人」の記事

「18歳選挙権」が施行され、「18歳成人」が成立しました。 若者の投票率が低い、国民の関心が低い、国民の理解を得ていないとの報道がいくつか...
昨日(2018年6月13日)の国会で「18歳成人」が可決されました。 施行は3年の周知期間を経て、2022年4月1日です。 関連の記...

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そもそもなぜ「20歳で成人」になったのか。

日本で「成年年齢」が20歳となったのは1876年(明治9年)の太政官布告で「満20歳を以て丁年(成年)とする」と発せられた時からです。

法務省の解説によると、「20歳」とされた理由は

明治期の立法者が、条約改正交渉のための体裁を整える政治的判断として、近代的な国家を作り上げる必要性から、21歳から25歳を成年年齢としていた当時の欧米の成年制度を受け入れることを基本に、15歳程度を成年とする日本の旧来の慣行(いわゆる元服)をも考慮に入れて、当時の国際的基準からいえばやや低く日本の旧来の慣行からすれば高い成年年齢を、大宝令を理由付けに採用した。

ということだったそうです。

現在の民法 -成人に関する主な項目-

第4条(成年) 年齢20歳をもって、成年とする。

第5条(未成年者の法律行為)

1 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。

2 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。

3 第1項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。

※ 第5条第1項は、未成年者は(一般的には)親の同意がないと契約できないというアレです。
第5条第2項は、親の同意がない契約は取り消せるという、アレです。
第5条第3項は、お小遣いのことをイメージするとわかりやすいですね^^

第6条(未成年者の営業の許可)

1 一種又は数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する。

2 前項の場合において、未成年者がその営業に堪えることができない事由があるときは、その法定代理人は、第4編(親族)の規定に従い、その許可を取り消し、又はこれを制限することができる。

※ 未成年といっても事業を起こし、いわゆるビジネスを行うからには成年と同等の権利を認める
そのかわり未成年者が有する民法の保護は受けられませんよ、
でもうまくいかなくてやめるのなら、規定に従って取り消し、未成年に戻れますということ。

第753条(婚姻による成年擬制)

未成年者が婚姻をしたときは、これによって成年に達したものとみなす。

※ ただし認められるのは契約や親権など司法的な法律行為であり、選挙権・飲酒・喫煙などは未成年と同じです。

成人年齢を18歳とする必要性やメリットがあるのか?

18歳成人を反対とする人は、さすがに 酒・タバコなんてとんでもない、と言う方はいなくなったようですが(今回改正でもダメなので)。

依然として多くの方がこの疑問を投げかけています。
「18歳成人」については国民から18歳にしてほしいといったわけでもなく、
若い人たちから18歳で成人と認めてくれ、と要望があったわけでもありません。

それなのにいったいなぜ? なんのために?

どうして? どうしてなの??

政府の見解

政府が「成人年齢引き下げ」に関する民法改正案を国会に提出するに至るまでに約10年、いくつかの検討会、審議会が設けられ、議論が進められたようです。

法務委員会調査室・内田 亜也子さんが、この経緯と、「18歳成人の意義・必要性」をまとめたものを公開されています。

このうち、「18歳成人の意義・必要性」の部分は見やすいように抜き出して別ページに並べておきますのでお時間のある時にでもご覧下さい。

もうひとつ、内閣府ワーキンググループの報告書が公開されています。

「有識者」「著名人」の方々の意見

色々な立場の方が色々なところで意見を述べていらっしゃいます。
どれもがおおよそ同意できたし、反対意見も同感だと思いました。
そしてどちらかといえば賛成の方向に傾きました。

毎日新聞デジタルでは多方面の方々の意見が連載されていますのでその中からいくつかご紹介します。

あなたはどうお感じになるでしょうか?

【賛成】

若者に早くから権利と責任を与えつつ、一人前への緩やかな移行を社会で支えていく仕組みを同時に整えることが重要です。
さまざまな事情により児童福祉の対象となる子どもたちは、原則として18歳になると対象から外されます。自立に不利な状況に置かれた子どもたちに対し、サポートしていこうという児童福祉のすう勢と整合性をどうとっていくのかも論点です。
明治学院大准教授 元森絵里子さん(41)

情報感度が良いし、自分自身を客観的に見ながら、将来を見据えています。将来に自信を持てない子もいますが、社会が「君は大人だ」と認めることで意識が変わってくるはず。ですから「18歳成人」に私は賛成ですし、何の不思議もありません。
20歳で起業 椎木里佳

今や大学の入学式や卒業式にも親が来る。どうかしています。親世代が幼児化して子離れできないのです。
「18歳成人」でそうした風潮が改まるのを期待します。
「18歳成人だと成人式はどうなる?」という声があります。ばかばかしい。自治体主催の成人式なんて、これを機にやめるべきです。晴れ着の見せっこのどこが成人式ですか。
お祝いには、その人なりのスタイルがあるでしょう。公のお仕着せをありがたがる必要はありません。成人とは個を確立して、お仕着せに対する批判精神を正しく持つことです。
作家・下重暁子さん(81)

1989年に国連で採択された子どもの権利条約は18歳未満を「児童(子ども)」と定義し、日本は94年に批准しています。また、世界の多くの国が18歳から成人としています。日本は成人年齢引き下げが遅すぎるというのが率直な感想です。
高校教育のあり方、生徒に対する教師の向き合い方も見直していかないといけません。授業やホームルーム活動を通じ、生徒の主体性を育てるような方向に変わっていってほしいと願っています。選挙権年齢も18歳以上に引き下げられており、高校における政治教育、主権者教育も一層重要性を増しています。
家庭でできる教育もたくさんあります。親が政治に興味がないのに、子どもの関心は高いなんてことはあまりありません。日ごろからニュースを話題にし、選挙は必ず投票に行く。親がそうした姿勢を見せることで、社会に対する子どもの見る目は鋭くなり、自ら積極的に情報を求めるようになります。
法政大特任教授・尾木直樹さん(71)

成人式挙行は現行の20歳を維持してほしいと考えています。
成人式は、埼玉県蕨町(現蕨市)が1946年に開催した「青年祭」が始まりとされ、70年を超える歳月を経て発展し、国民生活に浸透しています。高校卒業後にそれぞれの道を歩み始めた若者たちが再会し、懇親を深める場にもなっています。18歳の多くは高校3年生。大半の地方自治体が成人式を開く1月は大学受験シーズン真っただ中で、成人を祝う環境が整っているとは言えません。
18歳に引き下げられると、そうした慣習は次第に失われ、高校生は制服で出席するという形になる可能性もあります。そうなれば振り袖という日本の文化も衰退していくかもしれません。
日本きもの連盟会長・奥山功さん(73)

先日、我々おっさんが20歳以上の学生40人に酒をおごるという企画をしました。学生起業家やクリエーターなど優秀な若者が参加してくれたのですが、多くが日本の未来に絶望しているんですよ。社会は高齢化し、政治はそっちばかり向いている。規制はきついし、税金はどんどん高くなる。満足に子育てだってできない。「世界に通用するスキルを身につけて日本を出たい」。そんな声ばっかりでした。日本は優秀な若い人たちから見捨てられるんじゃないかと。
「18歳はまだ子供」という意見もありますが、子供と扱うから子供のように振る舞うわけで、大人と扱えばちゃんと大人のように振る舞えます。親の同意なくクレジット契約できることが危険なら、義務教育でお金について事前にしっかり教えればいい。
情熱があるときに成人して起業でも政党を作るでもいい。そしてそういう人たちが力を持って、ネット投票が可能になって、ユーチューバーが当選してしまうくらいに変化した方が面白い社会になると思います。成人となる18、19歳の人たちに「未来は暗い」という閉塞(へいそく)感を打ち壊してほしいですね。
フリーライター・ヨッピーさん(37)

若者の消費者被害拡大を懸念する声があります。でも、選挙権を含めて「権利」も与えられているのです。「あなたたちは大人ですよ」と自覚を促す意味でも、成人年齢を18歳とするのは当然の流れではないでしょうか。大人たちが一方的に「子どもだから判断力がない」と決めつけるのはおかしい。
現在、少年法の適用年齢(現行20歳未満)を18歳未満に引き下げることなどについて、法制審議会(法相の諮問機関)の部会で検討が進んでいます。21年前の少年事件で高校生の長男を亡くした私も、部会の委員として議論に参加しています。
長男の事件後、同様の被害者家族たちと「少年犯罪被害当事者の会」を設立し、子どもたちを被害者にも加害者にもしない社会づくりを目指して活動しています。これまで多くの加害少年を見てきましたが、18、19歳の少年は自分が少年法で守られていることを知っています。適用年齢引き下げによって、安易な動機による犯罪や非行を思いとどまらせるといった効果が生まれると考えています。
少年犯罪被害当事者の会代表・武るり子さん(63)

<福井新聞から>
福井市の北隣にある福井県坂井市に構えたオフィスで4月から本格的に事業を展開。ユーチューバーとの連絡、企業との打ち合わせに追われる。「高校生でも、福井からでも、成功できる。そう世の中に示したい」
小原さんや役員らは会社のほかにも、イベント企画や10代目線で地方の情報を発信するブログ制作、プログラミング支援、ボランティア活動などを行う五つの関連グループを組織している。
小原さんたちの企業理念は「10代、20代が活躍できる社会を創る」。小原さんは「人口減少で若者の数は減っていくかもしれないけど、自分の世代は一人一人の仕事の質を高めて勝負する社会にしていきたい。高校生から福井を盛り上げていく」と意気込んでいる。
小原涼さん=地方から発信する17歳起業家

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【反対】

成人年齢の引き下げはメリットがほとんどなくデメリットがはるかに大きい。環境は整っておらず、引き下げは先送りすべきです。
最大のデメリットは、親の同意のない法律行為を取り消すことができる「未成年者取り消し権」が18歳から適用されなくなること。消費者被害が拡大する蓋然(がいぜん)性が極めて高い。政府は対応策の一つとして消費者契約法の改正を挙げています。恋愛感情につけ込む「デート商法」などによる不当な契約を取り消すことができる規定を盛り込む内容ですが、全く不十分です。
引き下げが実現すると、高校で成人と未成年者が混在しますが、親や教諭、国民の間でデメリットに関する理解が深まっているとは言えません。政府は先月、引き下げに伴って生じる問題の対応策を検討する関係省庁の連絡会議を発足させましたが、引き下げを前提にするのではなく、十分な対応策を講じた上で国民の声に耳を傾け、その是非を考えるべきでしょう。
日弁連消費者問題対策委員長・瀬戸和宏さん(62)

民法改正案では結婚年齢が成人年齢と同じ18歳となり、男女とも18歳で統一されます。基本的には賛成ですが、16、17歳で出産する女性が結婚できなくなり、非嫡出子が増える可能性があります。それが心配です。
2016年の人口動態調査で、16歳と17歳の母親から生まれた子は2007人。このうち嫡出子は785人でした。現行法では、保護者の同意を得て結婚すれば、成人として親権を得ることができますが、法改正後、この子たちは非嫡出子になってしまう。
10代で出産する事情はさまざまですが、生まれた子に責任はありません。
成人年齢の引き下げで懸念されている契約トラブルなどの問題は、実はすでに起きています。18歳は未熟です。成人の責任を負わせるのであれば、社会も相応の教育制度を整えるなど努力すべきです
助産師、看護師を経て首都大学東京教授・安達久美子さん(54)

成人年齢引き下げの議論の始まり~国会提出までの経緯

18歳成人の議論に関しては、それぞれのタイミングの都度、ニュースや新聞での報道はありましたが目立たなかったと思います。

気を付けてチェックしていた人も、10年前から今回の成立までを覚えている方はそうそういないのではないかと思います。

18歳成人成立までのコトの成り行きを時系列に並べてみます。

■2007年(平成19年)5月

「国民投票法」(正式には「日本国憲法の改正手続に関する法律」)制定
「附則 3条」に

国は、国民投票法が施行される平成22年5月18日までの間に、満18歳以上満20歳未
満の者が国政選挙に参加できること等となるよう、公職選挙法、成年年齢を定める民法そ
の他の法令の規定について検討を加え、必要な法制上の措置を講ずる

つまり、
・平成22年5月18日までに、「国民投票」だけでなく、「国政選挙」も18歳から投票できるように準備しましょう。
・その際、成人年齢を定める民法も検討しましょう。
・そのために必要な法的措置を取りましょう。

と定められたことが「成人年齢を二十歳にする」概論の始まりでした。

■2007年(平成19年)5月

これを受けて、「年齢条項の見直しに関する検討委員会」が内閣に設置され、「成人年齢引き下げ」の検討が具体的になります。

■2007年(平成19年)11月

「年齢条項の見直し」の対象となる法令(法令数にして340以上)をそれぞれ検討をする、ことを決定。

■2008年(平成20年)2月

法制審議会は「民法成年年齢部会」を設置、
民法の成年年齢を引き下げるべきかとうか、
婚姻年齢の検討
(成年年齢が18歳になった場合、男性は成年者でなければ婚姻できず、女性は
未成年者でも親の同意があれば婚姻できるという差が生じてしまうからである。)

を始め、計15回にわたる調査・審議を行った。

「民法成年年齢部会」の構成:法律家、各種専門家、高校生、大学生等

■2009年(平成21年)7月~10月

最終報告書 → 法制審議会に提出(4回審議)→法務大臣へ

■2010年(平成22年)5月

「国民投票」は18歳から が施行されるも、「18歳成人」を実現する環境は整わず。

■2014年(平成26年)6月

「附則 3条」を削除、「国民投票法改正法」が成立、「国民投票」は4年後までは20歳、それ以後は18歳 とする。

■2015年(平成27年)6月

「公職選挙法改正法」が成立、国政選挙の選挙権18歳が成立

■2015年(平成27年)10月1日

政府インターネットテレビ「選挙年齢が18歳以上に!」公開

■2016年(平成28年)6月

「公職選挙法改正法」施行

■2016年(平成28年)7月

参議院議員選挙は18歳から投票した

■2016年(平成28年)9月

成年年齢引き下げの環境が整いつつある として「18歳成人」のパブリックコメント募集を実施

「18歳成人」が実現した際の「消費者被害」の防止・救済の検討が具体的に始まる。

消費者庁、消費者委員会、消費者委員会内のワーキンググループなど

■2017年(平成29年)1月

ワーキンググループは「18~22歳の若年成人を対象とした保護策の整備」等を行うことを提案する報告書を取りまとめた。

■2017年(平成29年)8月

消費者委員会は「消費者契約法専門調査会」の報告書も取りまとめる

以後、引き続き

契約年齢
親権の対象となる年齢
養親となれる者の年齢
婚姻適齢
飲酒・喫煙・公営ギャンブル

等を主な課題として検討が続けられ、2018年(平成30年)の国会に提出の方向となってゆく。

■2018年(平成30年)3月13日 国会提出。

政府は13日、成人年齢を引き下げる民法改正案と、相続の仕組みを見直す民法改正案など関連法案を国会に提出した。今国会で成立させ、成人年齢引き下げは2022年4月の施行をめざす。社会にどんな影響を与え、暮らしのルールはどう変わるのか。
2018年3月13日 日本経済新聞

■2018年(平成30年)6月13日 可決・成立。

参院法務委員会は12日、成人年齢を現行の20歳から18歳に引き下げる民法改正案を与党などの賛成多数で可決した。13日の参院本会議で成立する見通しで、施行は2022年4月1日の予定。可決後、法務委は、若年者の消費者被害を防止し、救済を図るための必要な法整備を行うことなどを求める付帯決議を全会一致で採択した。
2018年6月12日 毎日新聞

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